(株)アライが、平成2年より手がけた『高断熱住宅』。
その当時はまさに「魔法の家」で、驚くことばかり。
住宅の性能の大切さを、身に染みてわかる事態でした。
断熱化した住宅内での温度変化は、
今までの常識を超えるものであり、
『朝になっても室温は下がらず、起きるのに何の障害もない』
のです。
こんな高断熱住宅を、既築の住宅にどうすれば施せるか?
それが、(株)アライの断熱改修への取り組みの開始でした。
今までの住宅の「何処がおかしくて」、
高断熱住宅との差が出来るのかは、
図1の丸印の箇所にあります。
丸印の部分を通って、壁内部を空気の行き来が自由にできるため、
断熱材が施されていても効果が発揮できません。
既築住宅で使用されている断熱材の多くは、
「繊維系」と呼ばれる断熱材で、
乾燥した静止空間内部では、十分に力を発揮する断熱材です。
空気が自由に動き回る空間では、持っている力を十分に発揮することは難しく、
寒い住宅になってしまいます。
断熱改修とは、図1の丸印の所を改修して、そこからの空気の出入りが無い状態にする事、
つまり丸印の部分に「気流止めを施す工事」と言う事になります。
これに「耐震改修」を加え、
ユーザーにとって大切な生命と財産を守れる住宅にする事が不可欠であります。
● 断熱材について
断熱材には、基本的に
「繊維系断熱材」
と
「発砲プラスティック系」
の2種類があり、
繊維系と発泡プラスティック系では断熱施工が異なりますので、
それぞれの断熱材の定義と特徴を理解する必要があります。
繊維系断熱材のグラスウールは、
「水蒸気」と「空気」に対して対策が必要です。
例えば、
セーターを着てバイクに乗ると寒いですよね。
空気の通し難いヤッケを来てバイクに乗ると、
寒さはだいぶ緩和されます。
グラスウールにはヤッケに変わるものとして「防湿フィルム」があり、
これが通常市販されているグラスウールがポリエチレンの袋に入っている理由です。
もちろん施工にも注意が必要です。
防湿層をきちんと柱、間柱の見つけ面に貼りつけ、
これを耐火ボードで挟み込み気密を行います。
気密をする事は大変重要な要素です。
● 気流止めについて
改修では、図1の丸印の所だけに気流止め工事を施し、
床下、壁 天井の空間をそれぞれ独立した空間に保ち、
床下や、天井裏の間仕切り部分に図2の様な気流止めを施す事で、
住宅内の温度変化は激変し、冬の朝起きるのに辛くない住宅へ様変わり致します。
それでは「気流止め」とは何でしょうか?
気流止めとは、空気の侵入口や出口に乾燥木材や防湿フィルムなどで空気の侵入を防ぐことを言います。
例えば現在多くの建築物で目にする、
土台と大引が同じ高さで構造用合板を使用する方法があり、
この場合、床下らからの気流を壁内に侵入させないための気流止めは、
構造用合板という事になります。
あるいは改修での大きな問題の一つに「床の水平」があります。
殆どの既存住宅は、床に傾きがあり、改修にあたって陸を取り直す工事も行います。
この場合、おすすめの気流止めは「先張りシートよる方法」です。
土台と30センチメートルくらい上部に、
あらかじめポリエチレンフィルム0.2ミリを施工してから根太掛けを付け、
根太をかけ床組をつくる方法です。
床断熱か、基礎断熱か、断熱を施工する部位は、
あらかじめ検討が必要で、出来れば簡単な矩計図を起こして、
そこに気密ラインと断熱ラインの色付けをして検討してみて下さい。
断熱、気密共に、連続して施す事が大変重要であり、
断熱材が施工されていない場所が存在したり、
防湿気密処理が施されない場所が存在すると、
そこに集中的に結露を招く結果になりますので注意をしてください。
サッシの補強は検討課題1の優先順位を持ちます。
ある調査によると住宅を構成する部位でサッシから冬場に48%の熱が逃げていき、
逆に夏には70%の熱をもらう事になるようです。
サッシの補強は不可欠です。
方法には、ガラス複層化、サッシの交換、内側に新たにサッシを追加する事です。
これに絡んでは遮蔽の行いやすいように、霧除けの設置であるとか、
夜間の換気通風のしやすい様に窓を開けても、
防犯と雨とが問題ない様に付属部品等で固める事になります。
現在使用されているペアーガラスには、
低放射複層ガラスいわゆる「LOWEガラス」というガラスの表面に金属の被膜を貼ったガラスが有ります。
このフィルムは、ペアーガラスの中空想の外側か、内側に貼る事が出来ますが、
貼る場所によって効果が異なります。
外気側ガラスに貼った物を「遮熱ガラス」と言い、
室内側のガラスに貼った物を「断熱タイプ」と称しています。
北関東に所在する弊社にとって、
お客様の住宅を改築させて戴くあたり、
お客様にどのタイプのLOWEガラスを進めたら、
お客様にとって快適で安心して暮らせる事ができ、
さらにエネルギー的にはどの形をお勧めすれば一番少なく暮らせるかを
シュミレーションして提案をしてまいりました。
暖房負荷と冷房負荷ではどちらが多く、
太陽とどういう風に付き合っていくのかを常に考えております。
今年の夏も非常に暑いですが、
高断熱化した住宅の夏の対処をシュミレーションして、
遮蔽の効果や、夜間の換気通風の効果を思う存分発揮できる住宅への変貌を期待します。
耐震改修を同時に進めるのは、断熱改修をするのにはどうしても外壁や内壁をはがすことが有り、
この時、土台と柱の接合部や桁と柱の接合部があらわになるため、
耐震補強が行いやすいためです。
同時に、環境の変わった住宅での生活が、
常に地震で揺れる事に対しての心配を持っているのではなく、
耐震改修をしっかりとして地震に対しての安心を持っていただきたいものです。
この際、基準としては一般診断法により、構造評点を査定し、補強をして下さい。
断熱改修とは、
ある一定の厚みを持った断熱材で欠損することなく住宅全体を覆い、
防露や空気の漏気対策をしっかりできた物へ改修する事です。
ここで最も分かりにくく最も重要なことは、「気密工事」です。
空気の漏気をなくすことを考えなければならず、
この工事が断熱改修の難しさを表す指標でもあります。
気密ラインを図面上に引きますが、
このラインは一定の法則で引くものではなく、
内側から外側へ曲がる事は多々あり、判断を適切にお願い致します。
既存住宅の断熱化および耐震化は、
原子力発電に頼らない社会実現への一歩ではないでしょうか。
民生部門とりわけ家庭とオフィスのエネルギーの増加は他の産業に比べて非常に大きく、
既築住宅の断熱耐震化を急ぐ必要は、エネルギー政策面からも必要です。
わたしたちの家庭において、
高騰するエネルギー料金、省エネを行いエネルギーのピークを減らすことは
大変価値ある事でありますし、
さらに改善された住宅内部における、冬場での最低室温の上昇は、
高齢化社会を向かえた日本では、大変望ましい姿であると言えます。
冬の夜中や、明け方の寒さがもたらす事故、トイレや脱衣場で起こる事故からの解放は大変重要です。
断熱改修のポイントは、
対象住宅をしっかり把握する事。
特にトイレ、洗面室、浴室の床下や土台周り、或いは小屋裏、木材の腐朽状況はどんなものか、
改修してあと30年40年人が住む住宅として存在できるかの判断は大変重要であり、
この判断を正確に行い、省エネで快適に過ごせる住宅の提供をする事であります。